弁護士を目指すサラリーマン

Thursday, April 13, 2006

驚きを感じたのであった

 私はそのときすっかり面目を失い、ひどく屈辱を感じてはいたが、もし一つのもっとも驚くべき事実にその瞬間自分の全注意をひかれなかったならば、このいまいましい言葉にたいしてすぐさま直接行動に出たかもしれない。私の着ていた外套は世にも珍しい種類の毛皮でこさえたものだった。どんなに珍しいもので、どんなに途方もないほど高価なものであったかということは、あえて言うまい。その型もまた、私自身の風変りな考案になるものだった。そんなつまらぬ事がらにまで、私はばかげたくらいに気むずかしくめかしやだったからである。そういうわけだったから、プレストン君が部屋の両開き扉の近くの床の上から拾い上げたものを私に渡してくれたとき、私は、私自身のがはや自分の腕にかかっていて(たしかに自分でうっかり腕へかけておいたのだ)、自分にさしつけられたのは、どこからどこまで、実にもっとも細かな点に至るまでも、それにそっくり似せた物にほかならぬということに気がついて、ほとんど恐怖に近いくらいの驚きを感じたのであった。あんなに私の秘密をすっぱ抜いてひどい目にあわせたあの不思議な人物は、私の記憶しているところでは外套にくるまっていた。そして私たちの一座の者は、私をのぞいては、誰ひとり外套を着ていなかったのだ。多少の落着きは保っていたので、私はプレストンが差出してくれたのを取り、誰の目にもつかずにそれを自分の外套の上にかけ、にらみ返すような強い顰(しか)め面(つら)をしながらその部屋を出た。そして、翌朝まだ夜の明けないうちに、まったく苦しいばかりの恐怖と屈辱とを感じながら、オックスフォードから大陸へあたふたと旅立ったのである。

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