弁護士を目指すサラリーマン

Thursday, April 13, 2006

驚きを感じたのであった

 私はそのときすっかり面目を失い、ひどく屈辱を感じてはいたが、もし一つのもっとも驚くべき事実にその瞬間自分の全注意をひかれなかったならば、このいまいましい言葉にたいしてすぐさま直接行動に出たかもしれない。私の着ていた外套は世にも珍しい種類の毛皮でこさえたものだった。どんなに珍しいもので、どんなに途方もないほど高価なものであったかということは、あえて言うまい。その型もまた、私自身の風変りな考案になるものだった。そんなつまらぬ事がらにまで、私はばかげたくらいに気むずかしくめかしやだったからである。そういうわけだったから、プレストン君が部屋の両開き扉の近くの床の上から拾い上げたものを私に渡してくれたとき、私は、私自身のがはや自分の腕にかかっていて(たしかに自分でうっかり腕へかけておいたのだ)、自分にさしつけられたのは、どこからどこまで、実にもっとも細かな点に至るまでも、それにそっくり似せた物にほかならぬということに気がついて、ほとんど恐怖に近いくらいの驚きを感じたのであった。あんなに私の秘密をすっぱ抜いてひどい目にあわせたあの不思議な人物は、私の記憶しているところでは外套にくるまっていた。そして私たちの一座の者は、私をのぞいては、誰ひとり外套を着ていなかったのだ。多少の落着きは保っていたので、私はプレストンが差出してくれたのを取り、誰の目にもつかずにそれを自分の外套の上にかけ、にらみ返すような強い顰(しか)め面(つら)をしながらその部屋を出た。そして、翌朝まだ夜の明けないうちに、まったく苦しいばかりの恐怖と屈辱とを感じながら、オックスフォードから大陸へあたふたと旅立ったのである。

競争者

 私はまた、自分の迫害者が、非常に長いあいだ(そのあいだずっと、私と同じ服装をするという彼の酔狂を、注意ぶかく、しかも驚嘆すべき巧妙さをもって、つづけていながら)、私の意志にいろいろな干渉をする際に、彼の目鼻だちをどんなときでも私に見せないようにしていた、ということにも気がつかずにはいられなかった。ウィルスンがたとい何者であろうとも、少なくともこのことは、実に衒(てら)いの、あるいは愚の最たるものにすぎなかった。イートンでの私の訓戒者――オックスフォードでの私の名誉の破壊者――ローマでの私の野心や、パリでの私の復讐(ふくしゅう)や、ナポリでの私の熱烈な恋や、さてはエジプトでの私の貪欲(どんよく)と彼が誤って名づけたものなどを、妨害した男――この私の悪魔であり悪の本尊である男が、私の学童時代のあのウィリアム・ウィルスン――ブランスビイ博士の学校でのあの同名者、学友、競争者――あの憎み恐れた競争者であることを、私が認められない、などと彼は一瞬間でも想像することができたろうか? そんなことはありえない! ――だが、私はこの劇の最後の重要な場面へ急ぐことにしよう。